PageMaker などの高いソフトは買えないけど日頃のレポートなどをもっときれいにしたい学生や、特殊な文書を作る必要のある研究者や国語・数学・理科などの先生の方にお勧めです。Web 上で文書を公開してみたいという方やパソコンでマニアックなことを してみたいという方はもちろん大歓迎です。
もちろんレベルが高いにこしたことはありませんがとりあえず、日本語・英語を入力できることは前提条件です。あとは、文字を太くしたり中央に寄せることができればOKです。(「えっ、それだけでいいの?」と思われるかもしれませんが、「ワードパッド」の基本的な使い方さえできればいいのです。Word 未経験者でももちろん大丈夫です。ちなみに、私が LaTeX を使い始めた時期は、自分のパソコンを手に入れてEメールを送 ることを覚えてから二ヶ月も経ってなかったと思います。)
LaTeX(「ラテック」もしくは「ラテフ」という変った読み方をする)というのは、市販ソフト顔負けのきれいな文書が作れる「文書整形ソフト」です。ちょっとカタい言葉を使うと「組版(くみはん)ソフト」ともいいます。これを使えば、文字を大きくしたり色をつけたりすることができるようになります。
しかし多くのパソコンユーザーは、これと似たようなことができるソフトを持っています。「ワープロソフト」ですね。・・・でも、あなたは本当にワープロソフトで満足できますか?
あなたは文字中心の文書作成にワープロソフトを使っていて、こんな風に感 じた経験はありませんか?
「一生懸命作った割には、あんまりぱっとしないな」
もちろん、図をふんだんに使う社内報の類であれば、満足のいくものを作ることもできるでしょう。しかし、(これが意外に多いのですが、)図をちょっとしか使わない文字中心の文書を作る場合に、十分に整ったデザインの文書を作るのはちょっと大変です。たとえば、レポートとかはその代表格でしょう。
(Word で美しい文書を作る事はできない、とは言っていません。Word をお持ちの方は、LaTeX の文書(PDF形式、6ページ)と、このLaTeX 文書を手本に作ったWord の文書 (リッチテキスト形式、1ページのみ抜粋)の両方を、印刷した上で見比べてみてください。Word も決して捨てたものではありません。)
さて、ここで登場した Word 文書ですが、見出しの大きさを設定したり、適切な空白を開けたりとなかなか面倒でした。(Word でのVBA や「スタイル」の設定かなんかを使えば、ある程度の自動化・一括処理も可能かもしれませんが、私はどうすればいいのかよく知りません。しかし、それ以前に、普通は見出しの設定など、個人レベルでそこまでこだわってる時間はないでしょう。)広告の文書ではないので、ワードアート等を駆使してLaTeXの苦手な図画処理に走る、ということもしにくいところです。
一方で、LaTeXの文書はどうだったでしょうか。人にもよるでしょうが、上の例ならおそらく、それほど出力に差は感じないかもしれません。しかし、ファイル全体を眺めていただければさらにわかってくると思います。LaTeX文書は、見出し部分に統一感があり、文字列と飾り枠だけでかなり満足のいくレベルを実現しているのです。文字だけなので一見地味ですが、じっくり見ていくと、本を読んでいるかのような出力に感じられるかもしれません。それもそのはず、LaTeX は数式部分を筆頭に、本を作ることができるレベルの出力を得ることが出来るからです。(それもそのはず、LaTeXの基礎を築いている"TeX"の作者のクヌース氏は、自分の著書を書くためにTeXを作っているのです。現在、アメリカ数学会ではTeXやLaTeXを使って原稿を作ることを求めていますし、原稿を日本でも岩波、技術評論社、白水社、シュプリンガー・フェアラーク東京などなど、実際にLaTeXが使われている出版社があるほどです。)
(しかしながら、普段からWordで美しい文書を書くよう心がけている方(もしくは美しい文書が書ける方)なら「Word の方がきれいだ」という方もいらっしゃるかもしれません。LaTeXで作ったレポートを見て「本みたいだ」と言う方が多かったこともあり、かなりの確信をもって「LaTeXの方がきれいだ」と書いているに過ぎません。このあたりは、ある程度個人の主観によるところなので、美的判断は個人にゆだねるのが原則です。)
また、他にもLaTeXは拡張機能を自由に付けることが出来るという利点があります。ワープロソフトの場合、アドインレベルでは対応できない新しい機能を付けて欲しいときには新しいバージョンが出るまで待ち、発売されたらお金を出して買わねばなりません。それに、自分の欲しい機能が次のバージョンで出るとは限りません。(たとえば、国語の教師なら喉から手が出るほど欲しい「漢詩作成機能」なんておそらく出ないでしょう。)LaTeXの場合、「漢詩作成機能」なんかも無料で配布されていますし、他にもインターネット(WWW)をくまなく探せば、名刺を作るパッケージ、化学構造式を描くパッケージ、ドイツの古本を再現可能なパッケージなど、面白いパッケージがたくさんあります。
さらに、文書を編集する環境を自由に選べるという利点もあります。ワープロソフトで文書を作る場合、(当たり前ですが)ワープロソフトで作らなければなりません。そうすると、動作の「重さ」も何とかして欲しいものですし、基本的に背景色が白の環境での文字入力ですので、目にもあまり優しくありません。(友人は、背景をいったん黒にしてから、最後に再び白に戻している、といってました。)他にも不満はいろいろあるでしょう。LaTeX なら、メモ帳をはじめ、テキスト文書を作れるソフトならどんなソフトでも作ることが出来ます。極端な例では、Wordではテキストファイルで保存できますので、かろうじてOKです。しかし、普通はインターネットやパソコンショップで手に入る、テキスト文書やプログラムを書くのに適した、下のような「エディタ」という種類のソフトを使うでしょう。(下のエディタはQX エディタ。縦書き編集に優れていることで有名。)これなら自由に背景色を変えるなど、カスタマイズが利くことが多いです。(ちなみに「メモ帳」もエディタです。)
フリーの環境で電子文書らしいPDF文書を作れるなど、LaTeXの魅力はこれだけにとどまりませんが、これはパソコン初心者も想定に入れていますので、詳しい解説はまた別の機会にします。しかし、この解説でLaTeXが具体的に一体どんなソフトなのか、分からなくなってきたと思います。そこで、次は「LaTeXは何か」を説明しましょう。
もし、「ツールバー上のボタンを押したりすると即座に文字が太く見える」などといった機能を「ワープロソフト」というのであれば、LaTeXはワープロソフトではありません。もちろん文字を太くすることは LaTeX にも可能ですが、マウス・クリックでその機能を実現するのではないのです。具体的には次のようにします。
\textbf{太い文字}
こんな風に、本文の文字に対して、これまた「文字」によるコマンドで指定してあげます。そして、その命令を解釈するソフトが、実は"LaTeX" なのです。LaTeXは命令を解釈し、DVIファイルにその結果を書き込みます。ですから、LaTeX というソフトの上で文字を書くのではありません。文字を入力できるソフトなら、何を使っても LaTeX への「命令」の入った文章を書けるのです。(だから「メモ帳」でも出来るのである!)
じゃあ何でその命令の解釈結果を表示するのかといいますと、命令を解釈した結果は、下図のようにDVI previewer(ディーブイアイ・プレビューア)という種類のソフトが表示します。ここではDVIプレビューアとして、dviout for Windows を使って説明することにします。また、命令の解釈結果を表示できるソフトはDVIプレビューアに限りません。解釈結果のDVIファイルをPSという形式に変換すれば別のソフトで表示・印刷できますし、PDFという形式にすれば、多くのパソコンにプレインストールされているAcrobat Readerというソフトで読むことが出来るようになります。(Microsoft Word とは違い、持っていない方でも無料で入手可能です。)
ホームページ(Web page)をメモ帳等のエディタで作ったことのある方なら、HTMLをご存知のことでしょう。LaTeXもHTMLも、「文字」のみでレイアウトの命令を指定していく、「マークアップ言語」というものの一種なのです。
「こんな英語みたいなコマンドは覚えなきゃいけないの?」という質問が出てくるかもしれませんが、後ほど「LaTeX をカンタンにする方法」で答えてみようと思います。 今はとりあえず「意識して覚えなくても、ソフトと小技で何とかなる」とでも答えておこうと思います。
0円、つまりタダで手に入れることが出来ます。関連ソフトや LaTeX の拡張機能もすべてタダで手に入ります。最新版はインターネットで手に入れることが出来ますが、超初心者の方々には厄介かもしれません。そこで、お金はかかりますが、LaTeX の参考書(本)に付属する CD-ROM から手に入れた LaTeX をインストールするという手段をとったほうがいいでしょう。
私のこの文書は、「LaTeX が難しい」という風評に対する一つの挑戦なのかもしれません。LaTeX の基本的な項目は、決して難解なものではありません。BASIC や C 言語みたいなプログラミングの経験者でなくたって、大丈夫です。(後に述べるソフトや小技を使えば、英語のコマンド類を覚える必要もありません。)もし Word みたく、どうしてもかなり自由度の高い文書配置をしたいというのであれば、たとえば Word 文書から LaTeX 文書を作ってくれるソフトも必要でしょう。しかし、普通にレポートを書いたり、テスト問題を作ったりする場合に、そんなに自由度の高い配置でなくとも大丈夫でしょう。ですから、実際私にはこうしたソフトは必要なかったですし、一切買っていません。
良い参考書は数多くあるのですが、「LaTeX2e 美文書作成入門」(奥村晴彦著、技術評論社、2980 円くらい)が私としては一番のおすすめです。理由は以下のとおりです。
内容はけっこう盛りだくさんではありますが、しばらくは新しい参考書を買わずにすむでしょう。
というわけで、LaTeX についての基本的な紹介をしました。他にも数え切れないほどの特徴があります。タダですし、ハードディスクに余裕があれば、試しに始めてみてはいかがですか?
次へ 目次に戻る