LaTeX文書に動画や音声を入れよう!

はじめに --- 動画や音声は重要です

さて、ここまで基本的に動かないものを扱ってきましたが、そろそろ動いたり音が鳴るものを扱ってみましょう。

しかしながら、「動画」や「音」を扱うといってもピンと来ない方がいるかもしれません。あるいは、これらについて、さほど重要ではないと思っている方もいるかもしれません。実際、普通にレポートを書く程度では、さっぱりこうしたファイルを扱う機会はないものです。

では、動画や音は単なる娯楽や道楽でしか使わないのでしょうか?もちろんそんなことはありません。動画や音は、何か製品などを紹介するときや教育の分野で多大な力を発揮します。たとえば「音」は発音記号だけでは分からない、実際の外国語の発音を伝えます。「動画」はものの動きを直接伝えますので、言葉や静止図だけではイメージしづらい現象を伝えるのに役立ちます。

さて、今回用いるパッケージはmovie15.styというものです。動画の扱いについて、LaTeXそのものはあまり関与しません。PDFの命令を用い、LaTeX文書をPDFに変換したときに、PDFに動画を埋め込むということになると思います。なお、動画はPDFに埋め込まれますので、配布時にはPDFファイル単体で構いません。(PDFへの動画埋め込みが完了しさえすれば、動画ファイルをPDFファイルと同じ場所においておく必要はありません。)

インストール

このパッケージはPSファイル経由でPDFファイルにしなければなりません。(dvipdfmxコマンドでの変換は出来ません。)そのためにはいくらか設定が必要となりますので、PSファイル経由でPDFに変換する方法 をご覧になって設定してください。今回のLaTeXソースファイルの処理方法についても書かれています。

また、PDF文書を閲覧する際にはAdobe Reader 6以上でないと動画が再生されないようです。Webで配布する際には必ずその旨記載するようにしてください。

さて、本題のmovie15.styです。次のリンク先からダウンロードしてきます。

ftp://ftp.dante.de/tex-archive/macros/latex/contrib/movie15.zip

ダウンロードしてきたファイルを解凍し、movie15.styをC:\usr\local\share\texmf\tex\latex\movie15(Cドライブの中のusrフォルダの中のlocalフォルダの中のshareフォルダの中のtexmfフォルダの中のtexフォルダの中のlatexフォルダの中にmovie15というフォルダを作り、そのフォルダの中)にmovie15.styをコピーします。その後、コマンドプロンプト(MS-DOSプロンプト)あるいは[スタート]→[ファイル名を指定して実行]にて

mktexlsr

と入力し、Enterを押すか、[OK]をクリックします。

使い方

基本的な使い方

基本的には、音声も動画も、プリアンブル(\documentclassと\begin{document}の間)に

\usepackage{movie15}
\usepackage[dvips]{hyperref}
\usepackage[dvips]{graphicx,color}

と書いておき、本文の動画あるいは音声を入れたい位置に

\includemovie[オプション]{幅}{高さ}{動画・音声ファイル名}

と記述しておき、TeX→DVI→PS→PDFと変換していくことで、動画や音声がPDFに埋め込まれます。音声の場合は幅と高さを省略することが出来ます。

一見単純そうに見えますね。ですが、埋め込む前にちょっとした作業が必要となります。

対応しているファイル形式

その前に、このパッケージ(というかPDF)で扱えるファイル形式について確認しておきましょう。かなりたくさんのファイル形式をサポートしています。(movie15.styのマニュアルからそのままコピーしました。)対応していないファイル形式については、何らかのやり方で対応しているファイル形式に変換する必要があります。

aif, aifc, aiff audio/aiff: Audio Interchange File Format
au, snd: audio/basic NeXT/Sun Audio Format
avi: video/avi Audio/Video Interleaved
mid, rmi: audio/midi Musical Instrument Digital Interface
mov, qt: video/quicktime Apple QuickTime
mp3, m3u: audio/x-mp3 MPEG Audio Layer-3
mp4 video/mp4: MPEG-4 Video/Audio
mpeg, mpg: video/mpeg MPEG-2 Video
ra, ram, rm: audio/x-pn-realaudio Real Media
smil: application/smil Synchronized Multimedia Integration Language
swf: application/x-shockwave-flash (Adobe?) Macromedia Flash
u3d: model/u3d Universal 3D File Format
wav: audio/wav MS Audio Format
wma: audio/x-ms-wma Windows Media Audio
wmv: video/x-ms-wmv Windows Media Video

具体的な使い方 --- 音声編

まずは音声からです。音声の場合、文字列にリンクを設定して、閲覧者にそのリンクをクリックしてもらうことで、音声を再生することになります。(ちなみにautoplayオプションで音声を自動再生させることは出来ます。でもやめたほうがいいです。)したがって、たとえば次のようになります。

\includemovie[text={\textcolor[named]{Blue}{\underline{Linuxの発音}}}]{}{}{english.au}

「text=」というのは、イコールの後に動画や音声が再生される位置に入れておく文字列・図などを指定するオプションです。ここでは、文字色を青に変える\textcolor[named{Blue}{任意の文字列}と文字に下線を引く\underline{任意の文字列}という命令を用いています。(それぞれ「任意の文字列」に処理をさせたい文字列を記入します。)こうしておくことで、青い文字に青い下線が引かれ、あたかもそこにリンクがあるかのように見える、というわけです。

音声ですので、幅と高さは空欄にしておきます。そして、音声ファイルとして、LaTeXソースファイルと同じ場所にあるenglish.auというファイルを指定しておきます。このファイルは「Linux」という単語の発音(英語版)を示した音声ファイル(au形式)で、これを再生テストとして用いています。ダウンロードし、LaTeXソースファイルと同じ場所にコピーしておきます。

音声はこれで大丈夫です。

具体的な使い方 --- 動画編

次は動画です。

まず、「デジタルビデオカメラを持ってないので動画なんてない」という方は、 IPA作成の教育用動画素材集(太陽系)算数・数学・情報の教材用動画などがありますので、これでテストしてみましょう。ここでは、二次関数の説明(mpg形式)を用います。

まず、動画の幅と高さを指定しますので、これらを求めなければなりません。そのためのソフトとしてVirtualDubModというフリーソフトを用います。(WMV形式には対応していないそうです。AVIUTL「DirectShow File Reader プラグイン for AviUtl」を組み合わせる事でWMVをAVIに変換することが可能になりますので、そちらを試してみてください。) VirtualDubModをダウンロードし、zipファイルを解凍します。

解凍して出てきたフォルダの中にVirtualDubMod(.exe)という名前のファイルがありますので、これをダブルクリックします。

すると、ソフトのライセンスが表示されます。[OK]をクリックします。

ライセンス表示

簡単なVirtualDubModの紹介文が表示されます。[Start Virtual DubMod]をクリックします。

簡単な紹介文

Matroskaという形式については最新のものに対応していないという注意文です。今回は画面サイズを測るだけなので無視して[OK]をクリックします。

Matroska形式に関する注意文

これでようやく起動しました。動画ファイルを開き(あるいは先ほどのVirtualDubMod(.exe)へ動画ファイルをドラッグ&ドロップでもよい)、メニューバーより[File]→[File Information]と選びます。すると、次のように表示されます。

動画の情報

ここで必要なのは、[Frame size, aspect_ratio_information]という項目の右にある「320×240」です。これが求める動画の画面サイズです。「幅×高さ」の形式でピクセル単位で記述されています。

しかし、LaTeXはピクセル単位に対応していませんので、これらの値に0.353をかけてmm単位に換算します。(ディスプレイの解像度や大きさ、Windowsの画面の解像度によって多少異なりますが、あまり極端には値を外していないと思います。)320×0.353=112.84 mm、240×0.353=84.67 mmです。

これで、動画の画面サイズがmm単位で分かりました。LaTeXソースファイルの本文に次のように記述します。(先ほどダウンロードした動画をLaTeXソースファイルと同じ場所にコピーすることをお忘れなく!)

\vspace{0.3cm} \includemovie[text={\rule[-42.33mm]{112.84mm}{84.67mm}}]{112.84mm}{84.67mm}{C30.mpg} \vspace{0.3cm}

まず、\includemovieの周りにある\vspaceは縦方向に空白を入れる命令です。(ここでは0.3cmの空白を入れています。)これは先ほどのピクセル→mm換算において、PC環境によって多少の誤差が出ることを考慮したものです。

本題の\includemovieに移りましょう。まず、「text=」というのは、イコールの後に動画や音声が再生される位置に入れておく文字列・図などを指定するオプションなのでした。ここに、黒い長方形を入れ、何も映し出されないスクリーンのようなイメージをもたせることにしましょう。

この黒い長方形を出力する命令は\ruleです。

\rule[縦方向へのずれ]{幅}{高さ}

のようにして使います。まず「縦方向へのずれ」ですが、これは「text=」で指定した文字などが画面の縦の中央に表示されることを考え、黒い長方形を画面の下にずらすようにします。したがって、「画面の高さ÷2」すなわち84.67÷2=42.33と求めます。これにマイナス(-)をつけ、下にずらします。(-42.33mm。)あとは画面のサイズと同じように幅・高さを指定します。

\includemovieでの幅・高さの指定も、先ほど求めた値(イコール\ruleで用いた幅・高さ)と同じ値を記述します。そして、動画ファイル(ここではC30.mpg)を指定します。

まとめと出力

では、これらをまとめて次のようなLaTeX文書を記述しましょう。

\documentclass{jarticle}

\usepackage{movie15}
\usepackage[dvips]{hyperref}
\usepackage[dvips]{graphicx,color}

\begin{document}
二次関数について見ていきましょう。下の黒い大きな四角をクリックすると動画が 再生されます。

\vspace{0.3cm}

\includemovie[text={\rule[-42.33mm]{112.84mm}{84.67mm}}]{112.84mm}{84.67mm}{C30.mpg}

\vspace{0.3cm}

Linuxの発音を聞いてみましょう。(発音のみの音声ではありませんが。)下の青い下線部をクリックしてください。

\includemovie[text={\textcolor[named]{Blue}{\underline{Linuxの発音}}}]{}{}{english.au}

\end{document}

あとは、LaTeX→DVI→PS→PDFのように変換処理していきます。(具体的には、platex→dvipsk→cjkps2pdf。)では、PDFを見てみましょう。

動画出力

音声や動画は自動で再生されません。上の黒い長方形をクリックすると動画が、青下線部(ここでは「Linuxの発音」)をクリックすると音声が再生されます。

是非教育に、プレゼンに、活用してみてください。

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