ワープロソフトではMicrosoft Wordが事実上の標準となりかけているように、数 式の美しさではTeXが事実上の標準です。(事実、米国数学会や米国物理学会は、論文 の提出をTeX形式で出すよう求めています。)しかし、数式にまつわる記号はか なり多いです。そこで、基本的な数式の書き方をマスターした上で、種々雑多な 記号をどう(楽に)取り扱っていくかを考えていくことにしましょう。
ちなみに、Microsoft Wordでも数式をかけます。 「数式エディタ」という機能がそれです。 [挿入 (I)] -> [オブジェクト (O)] で出てくるウィンドウ(下図参照) の「オブジェクトの種類」という項目で「Microsoft 数式」 というのがありますので、それを選んでOKを押せば、数式用ツールバーが 出てきます。数式は、そのツールバーを使いながら操作します。
TeXで美しい数式を書くことをお薦めしますが、TeXでないと 数式が書けないということはありませんので、念のため。
TeXでは、「ここからここまで、数式用の命令を使いま すよ」という区切りをつけるために、数式環境 を用います。では、その区切りをどう示せばよいのでしょうか。それに はいくつか方法があります。
文章中に数式を用いたいときに利用します。ただ、インテグラルなど、 大きい記号が縮こまってしまうので、それが嫌な場合は最初の方に \displaystyleと書いておきます。
1行分使って数式を書いてしまいたい ときに使います。
equation環境を用いるやり方です。数式番号が付きますので、なかな か便利です。数式番号がいらないときは \begin{equation*}と\end{equation*}と、 equationにアスタリスク(*)をつけたequation*環境を使います。 \section*{}というアスタリスクの命令も、数字のつかない見出しの命令 でしたね。こうした「アスタリスクは番号を振らない」というものは、い ろいろなところで見られます。
EasyTeXでは[TeXテキスト (A)] -> [1行の数式 (E)]で出来ます。
複数行に渡る数式ではeqnarrayを使います。数式には自動的に番号が つけられます。・・・そうです。アスタリスクつきのeqnarray*環境では 番号が振られません。
EasyTeXでは[TeXテキスト (A)] -> [複数行の数式 (A)]で出来ます。数式 の行数と、1行目を左寄せにするかどうか聞かれますので、適切に答えて いってください。
さて、数式を解く過程を示す際に、等号などを次のようにそろえたいときが あります。
そのような時は、次のように & で=を挟んでしまいます。&は「区 切りの&」で、&の左右の項目をそろえるために踏ん張っていま す。=が左右に動 かないための壁を&が作っていると考えると分かりやすいでしょう。
\begin{eqnarray*}
4 + (5 + 2) & = & 4 + 7 \\
& = & 11
\end{eqnarray*}
上の\\は、改行のための命令です。
以下の説明は、すべてこうして作る数式環境中にのみ適用できます。普通の (数式でない)部分で以下の命令を使うと、エラーになります。
32と書きたいときは3^{2}のように^を、数列などでx2と添え字を 書きたいときは x_{2}のように_を使います。^は上の方に、_は下のほうにオブジェがあ る感じがする記号なので、なんとなく覚えやすいでしょう。ちなみに、これは累 乗のみならず、インテグラルや和のシグマ記号の上下の文字にも使われます。したがっ て、「累乗や添え字の記号」としてではなく、「上や下の数式のための記号」と して覚えておきましょう。
和(離散和)の記号であるΣ(\sum) とその周辺は次のように書きます。
\sum _{k = 1} ^{n} k + 2
EasyTeXでは[TeX数式 (M)] -> [演算記号 (O)] -> [Σ:\sum]です。
ここで出力がどうなるかを考えてみましょう。
\sum はΣに変換されます。その後ろに "_" と"^"があります。Σに累乗がつく姿など見たことがありません ね。^と_はあくまで「上や下の数式のための記号」でした。さてどうなるかわか りましたか?
正解できたでしょうか。
お次は積分記号(連続和)のインテグラルです。インテグラルの頭文字をとっ て\intという命令になっています。(EasyTeXでは [TeX数式 (M)] -> [演算記号 (O)] -> [∫:\int]です。)これも、次の ように使います。
\int _{1} ^{3} x + 2
\int は∫に変換されます。その後ろに "_" と"^"があります。・・・どうなるでしょうか。
このように、^ と_ は頻繁に使いますので、最重要項目として覚えておいて ください。
数式に出てくる変数は、たとえばxであれば$x$と書きます。1文字でも 面倒でも数式環境にして書いてください。 そうすると、数式用フォント(イタリックではない) でxが出力されます。これなら、数式に出てくる変数xだと容易に分かりますね。
分数の基本書式は次の通りです。
\frac{分子}{分母}
分子が左ですので注意してください。EasyTeXの場合は [TeX数式 (M)] -> [その他 (E)] -> [分数 (F)]です。 たとえば、
\frac{1}{100}
であれば、出力は
となります。「分数の棒が短い」と感じた方は、emathという初等数学用マクロ (拡張機能)を導入してみてください。
次に、分数等を囲む、大きな括弧の出し方を見ていきたいと思います。
これは、次のように、左の括弧に\left 右の括弧に\right をつけます。\left( \frac{1}{100} \right)
\left\{ \frac{1}{100} \right\}
2行目は、LaTeXの命令の一部である{を「文字」として使うために、 \{という命令で{を出力させています。そうしないとエラーになります。
では、その大きな括弧に上付き文字と下付き文字を付けた、次の式を出力 してみましょう。[と]はTeXの命令で使われますが、\[と\]は使わず、そのまま [と]を使ってください。\[ \] は1行を丸ごと使った数式環境に使われる命令でし た。
\int _{1} ^{3} x dx = \left[ \frac{1}{2} x^{2} \right] ^{3} _{1}
出力は次の通りです。
行列は次のようにして書きます。ここでは4行3列の行列を書いてみます。
\left(
\begin{array}{ccc}
1 & 3 & 5 \\
3 & 5 & 7 \\
9 & 12 & 14 \\
18 & 8 & 100
\end{array}
\right)
&はeqnarray環境の解説で出てきた「区切りの&」です。列の間を区 切ってくれています。また、\begin{array}{ccc} のcccは、「3列ともすべて中央寄せにする」という意味です。(cはCenter。) たとえば最後を左寄せのl(lはLeft)、つまりcclとすることもできます。
EasyTeXの場合は非常に簡単です。[TeX数式 (M)] -> [行列 (M)]をクリッ クすると、行と列の数を聞いてきます。ここでは4行3列ですので、4, 3と答えて いけばよいです。ちなみに上のコードはEasyTeXで出したものです。
最後に、化学反応式の書き方を考えてみます。(数学じゃないですけれどね。 )標準では、数式は数式用フォント(斜めのフォント)で書かれます。したがっ て、まっすぐ立っている元素記号の文字にするために、一工夫いることになりま す。
原理的な説明を省きますが、プリアンブル(\documentclass{jarticle}と \begin{document}の間の領域、という意味でした)に次のように書いてください。 (簡単に言いますと、数式環境中のアルファベットをまっすぐ立った文字にする ための、chemと名づけた数式バージョンを作っているわけです。
\DeclareMathVersion{chem}
\SetSymbolFont{letters}{chem}{OT1}{cmr}{m}{n}
数式バージョンを、まっすぐ文字のたったchemバージョンにしたい場合は次のよ うに書きます。
\mathversion{chem}
数式バージョンを、普通の数式用フォントで文字が表示されるnormalバージョ ンにしたい場合は次のように書きます。
\mathversion{normal}
まとめると、次のようになります。
\documentclass[a4paper,12pt]{jarticle}
\DeclareMathVersion{chem}
\SetSymbolFont{letters}{chem}{OT1}{cmr}{m}{n}
\begin{document}
\[
2H_{2} + O_{2} \rightarrow 2H_{2}O
\]
\mathversion{chem}
\[
2H_{2} + O_{2} \rightarrow 2H_{2}O
\]
\mathversion{normal}
\[
2H_{2} + O_{2} \rightarrow 2H_{2}O
\]
出力は次の通りです。
もちろん、真ん中の化学反応式(mathversionがchem)が正しい書き方です。 \rightarrowは、その名の通り、右矢印を出力する命令です。
他にも、たくさんの記号があります。それらのすべてをここで取り上げるこ とは出来ませんし、仮に取り上げたとしてもそれを覚えるのは大変です。 (とはいえ、そうした記号類を網羅したLaTeX入門書は持っているべきです。)
まず、そうした数学記号を使うために、プリアンブルに次のように書いてく ださい。
\usepackage{amsmath,amsthm,amssymb}
これ以降は、LaTeXの補完機能等の力を借りるべきでしょう。
たとえば、WinShellは [Options] -> [View] から、Arrows, Binary Operators, Relations, Greek Lettersの4つをそれぞれクリックし、ツールバーを表示させることで、容易に多 様な数学記号を書くことが出来るようになります。
EasyTeXに至っては、これまで見てきたように、メニューバーの[TeX数式 (M)]の 中からかなりたくさんの数学上の記号が選べるようになっています。WinShellに はない、sinやcosの関数名の補完機能など、かなり充実しています。
Meadow上のYaTeXは「イメー ジ補完」という機能があり、たとえば右矢印は数式モード中で;->と入力するだ けで\longrightarrowが入力できてしまいます。
特に、学会等にTeXで提出しなければならない方々は、こうした補完機能は必 須だと思います。(忙しくてTeXの命令覚えてる暇もありませんしね。)
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