LaTeX で縦書き編集(和歌・俳句、漢文含む)

はじめに

pTeXでは、tarticleクラスファイル(TeXにおいて文書様式を決めるファイル)を用いることで縦書きも扱うことができます。また、藤田先生のパッケージファイルを用いることで、和歌や俳句の記述や漢文などに適した多彩な組版を実現することができます。

詳細については、藤田眞作 著「続LaTeX2e階梯・縦組編」(アジソン・ウェスレイ)、同著「pLaTeX2e入門・縦横文書術」(ピアソン・エデュケーション)などを御覧いただければわかりますので、ここでは簡単に使い方を示すのみとします。

縦書き編集ことはじめ

まずは基本中の基本、「どうすれば縦書き編集ができるのか」から説明します。これには、ソースファイルの一行目に次のように書くだけでOKです。

\documentclass{tarticle}

上のように、\documentclass命令で、普段のjarticleやjsarticleなどの横書きクラスファイルを指定する代わりに、tarticleクラスファイルを指定するだけです。(もうちょっと詳しい人に補足。JISフォントメトリックを用いたjsarticleクラスファイルがあるので、「tsarticleクラスファイル」があるのでは、と思うかもしれませんが、現在のところそのようなクラスファイルはないようです。)

では、\begin{document}と\end{document}の間に書く本文についてみていきましょう。基本的にはjarticleなどの横書きで使える命令の多くは、そのまま使えます。使えるかどうかわからなければ、実際に試してみると良いと思います。

縦書き文書では、それに加えて縦書き特有の命令が使えます。まず傍点(字の横につける点)を書いてみます。それには、\bou命令を使います。

\bou{傍点}を使う

出力は次のとおりです。

傍点の出力

次は縦中横です。「縦中横(たてちゅうよこ)」という言葉は聞きなれないかもしれませんが、要するに縦書きで使われる2文字の数字を部分的に横書きにする手法です。たとえば、

15歳の夜

という記述を縦書き環境ですると、

縦中横が使われていない出力

と不自然な出力が得られます。(ちなみに、尾崎豊の曲は「15の夜」です。)こんな出力よりは、「15」を漢数字で書くか、部分的に「15」を横書きにしたい(これを「縦中横」という)ですよね。そこで、次のように書きます。

\rensuji{15}歳の夜

\rensuji命令は、その中の文字を部分的に横書きにする縦中横の命令です。(ちなみに数字は何桁でもOKですし、ひらがななどの普通の文字でも構いません。面白いので試してみてくださいな。)出力は次のようになります。

縦中横が使われている出力

これなら満足できるでしょう。

縦書き編集に役立つパッケージのインストール

藤田先生のサイトからは、縦書き編集に役立つパッケージを入手することができます。縦書き編集を行う方なら、持っていると役に立つでしょう。全部いただいてきてください。

http://imt.chem.kit.ac.jp/fujita/fujitas2/texlatex/index.html

インストール方法ですが、ファイル群をパッケージファイル(スタイルファイル)の置き場所にコピーするだけです。(名前の最後にstyと書かれているものはそのままコピー。lzhとあるものは「+Lhaca」などのソフトで解凍してからコピー。)たとえば、texmfフォルダがC:\usr\local\shareフォルダの中にあるのであれば、C:\usr\local\share\texmf\texフォルダ(ptexフォルダのほうが良いですが、私はパッケージファイルをtexフォルダの中に一括してまとめてしまっています。)にたとえばfujitaフォルダでも作り、その中にファイル群をコピーする、といった手はずになります。この作業が終わったら、毎度おなじみ次のコマンドを実行します。

mktexlsr

和歌・俳句の書き方

和歌や俳句は、四分アキで書くことになります。和歌や俳句を書く際にはshiika環境を使います。まず、shiikaパッケージを読み込みます。プリアンブル(\documentclassと\begin{document}の間)に次のように記述します。

\usepackage{shiika}

そして、和歌や俳句をshiika環境で囲みます。

\begin{shiika}

古池や蛙飛び込む水の音

\end{shiika}

出力は次のようになります。四分アキがわかりやすいように、shiika環境で囲んでいないない通常の文章を隣に記しました。(左がshiika環境で囲んだものです。)

shiika環境の四分アキ

shiika環境は自動的に先頭が空くようです。なお、「ゝ」や「ゞ」(これはMS IME(Windows付属のかな漢字変換ソフト)であれば、「くりかえし」という文字を漢字変換するか、左から三番目のIMEパッドで出せる)は、shiika環境内で\kanjiatukai命令で

\kanjiatukai{ゝ}

のようにしないと、均等割りがうまく働きません。\kanjiatukai命令を使う際には、プリアンブルに

\usepackage{jdkintou}

と記述して、jdkintouパッケージを読み込む必要があります。

他にもいろいろできますが、残りは前にあげた藤田先生の著書を御覧ください。

漢文の書き方

漢文は、初めての方のためにの出力例でも登場したので、どのように書くのか気になっていた方もいらっしゃると思います。まず、漢文を書く際には、プリアンブルに次のように記述します。

\usepackage{sfkanbun}
\usepackage{jdkintou}

では、早速漢文を一文字だけ書いてみましょう。お題は「不」という文字です。読みは「ざ」、送り仮名は「ル」、返り点は「レ」です。この場合、次のように書けばOKです。

\kundoku{不}{ざ}{ル}{レ}

\kundoku命令が、漢文の訓点文を作るための命令になります。最初に漢字を一文字書き、その読み、送り仮名、返り点の順に記述します。すると、次のような出力が得られます。

\kundoku命令の出力

あとは\kundoku命令を繰り返し記述していけば、漢文の出来上がりです。試しに書いてみましょう。

なお、読み・送り仮名・返り点が不要な漢字はそのまま記述します。返り点の隣に送り仮名を記述したい場合は、返り点の横に山括弧(<>)を書き、そこに送り仮名を記述します。(ちなみに、「二の字点」を記述するための命令が用意されています。\ninojitenという命令であり、それも例文中で使ってみます。また、句読点は半角括弧で囲んで記述します。)

子\kundoku{曰}{}{ハク}{}(、)\kundoku{盍}{なん}{ゾ}{三}<ルト>各\ninojiten\kundoku{言}{}{ハ}{二}\kundoku{爾}{なんぢ}{ノ}{}\kundoku{志}{}{ヲ}{一}(。)

では、出力してみましょう。

漢文の出力

さらに、漢詩のように、漢字を横に並んだ状態で出力したいときがあります。その場合はkanshi環境を用いて記述します。なお、先頭の字下げを抑制するために、漢詩全体を\noindent(段落初めの字下げをしないための命令)で囲んでおくと良いかもしれません。(邪道かもしれません。なお、本文で参考にしている、本パッケージの作者である藤田先生の「pLaTeX2e 入門・縦横文書術」では漢詩のタイトルをつけていて、漢詩本文のみの引用という使い方をしていないため、公式の対処法はわかりません。)

\begin{kanshi}
\noindent{年年歳歳花\kundoku{相}{あい}{}{}\kundoku{似}{}{タリ}{} \\
歳歳年年人\kundoku{不}{}{}{レ}\kundoku{同}{}{ジカラ}{}}
\end{kanshi}

出力例は次のとおりです。

なお、本文書の全体にわたっていえることですが、ここで紹介しているパッケージの機能は多彩です。ですので、漢文に限らず、本格的に縦書きを扱いたい場合は、ぜひ藤田先生の、TeXの縦書き関連の著作をあたってみてください。

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